11.ほぼ確実になったスタンレイ

 その導入記録によっても信憑性が極めて高い群馬県のスタンレイと、さらには、以上のような複数の周辺情報の一致によって、ようやくほぼ確実と考えられるスタンレイを同定するに至りました。そして、それは、意外にも一般マーケットや老舗のブルーベリー農園でもよく見かける品種だったのでした。

 やはり、スタンレイという品種は、信頼性のある種苗会社の扱いとしては、すでに消滅していたが、その多くが日本には残存していたと考えるのが妥当でした。この以前から多く見かける機会のあったスタンレイは、葉に極めて個性的な特徴がありました。そして、その葉の特徴によってだけでも、ほぼ完全に同定可能ともいえる品種だったのです。

 成長した葉は、順調な生育であるにもかかわらず、葉の色が一定でなく若干のクロロシス症状であるかのように見えるのが大きな特徴なのです。また、葉の展開後は、多くの葉が裏側にたわむ傾向が顕著な品種で、これもかなり個性的な外形的特徴といえるでしょう。

 なお、この品種は、混乱したブルーベリー苗木マーケットを象徴するかのごとく、スタンレイという品種名以外にも様々な品種名を付与され、一般市場に多く流通しているものでした。私が、最初にアーリーブルーとして購入した苗木も、この品種であり、スタンレイとして購入したのもこの品種であったのでした。

 さらに、興味深く、象徴的な事例として、このスタンレイは、日本への導入当初は、なんとビッグセブンの1品種であるブルーレイということで導入されていたことも明らかとなったのでした。実際、現在でも、このスタンレイが、ブルーレイとして販売されている事例も多く、古い生産農家でもブルーレイとして扱っているところが存在するのでした。

 ブルーベリー研究では最も有名ともいえる東京農工大学では、かつて、岩垣駛夫教授の努力によって、日本への初期導入品種にいくつかの誤った品種が混入していたことに早くから気づき、1974年にはニュージャージー州立大学から、ビッグセブンの正確な穂木とダロウ、ジャージー、ウェイマウスの計11品種を再導入している記録があります。

 しかし、その中には、スタンレイは含まれておらず、アメリカ同様に、ビッグセブンと主要な品種以外の小〜中粒品種には、もはや興味がなかったか、研究対象とする余裕がなかったことが伺えます。

 そして、これ以降、東京農工大学では、初期の誤ったブルーレイを、通称「オールドブルーレイ」という名称で扱ってきたのだった。しかし、その「オールドブルーレイ」とされてきたものが、本当は何という品種だったのかということについては、全く言及されてはいませんし、調査もされていないのでしょう。

 そして、このスタンレイは、この通称「オールドブルーレイ」とも、完全に同一のものであることがわかったのでした。このような経緯からも、このスタンレイが、いくつもの名称を冠されで扱われてきた理由も納得できるような気がしました。そして、この事実が、当時のアメリカにおいても相当な品種混乱があったことの大きな裏付けともいえるのでしょう。

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