13.柳田村というブルーベリー産地

 石川県能登半島の柳田村は、古くから極めて熱心にブルーベリー栽培に着手した地域だといえます。海に囲まれた能登半島で唯一海に面していない中山間地であり、過疎化が急激に進む柳田村は、その脱却を目指し、村おこし対策として早くからブルーベリーに注目していました。そして、1993年には、第一回ブルーベリーシンポジウムの開催地となるとともに、日本初の公営ブルーベリー農場、第三セクターによるブルーベリー加工品の製造販売などによってブルーベリーの産地化に成功したのでした。

 しかし、ブルーベリーへの取り組みが早かったがゆえに、導入当初の異品種混入のあおりを受けて、それだけ品種の混乱も多かった地域であったともいえるでしょう。

 どちらにせよ、柳田村から到着したスタンレイは、その導入経路をしっかりと確認する必要がありました。しかし、やはりあまりにも古いことで、その詳細は全くといっていいほど明らかにはなりませんでした。ここでも、「この株は昔からスタンレイであるとされてきた品種だ」という曖昧な回答しか得られなかたのです。

 しかし、私には、そのようなことよりも、むしろ、日本の古い産地である柳田村に、実生などによって増殖されたものでないにもかかわらず、今まで見たこともない品種が存在していたことが、ある意味衝撃だったのでした。

 この柳田村のスタンレイの観察で、私がたいへん興味深く感じたことは、葉が鋸歯であったことでした。北部ハイブッシュ系品種で、葉が鋸歯であるものは極めて少ないのです。今のところわかっているものとしては、ビッグセブン以前は、なんと1926年開発のランコーカスのみなのです。その後は、ローブッシュが交配されたパトリオット(1957年)、そしてブリジッタ(1978年)とサンライズ(1988年)に鋸歯が見られるのみです。それ以外は、やはりローブッシュが交配されることの多い新しい系統である半樹高ハイブッシュ系品種の特徴として多く見られます。

 北部ハイブッシュ系品種では、その他にブルーレイやコビルなどにも鋸歯が見られることもあるが、それは成長期の一時期だけであり、葉がしっかりと展開すると、その鋸歯はきれいに消えてしまうのです。

 だとするならば、鋸歯を特徴とすることが多い半樹高ハイブッシュ系品種が導入される遥か以前から、柳田村でスタンレイとされてきたこの品種は、一体なんなのだろうか。この古い品種が、実は本当のスタンレイなのだろうか。そのような新たな疑問を孕みつつ、「本物のスタンレイ探しの旅」は、再び白紙に戻ることとなったのでした。

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