17.やはり、スタンレイではない

 横田氏は、岩手大学教授時代に、私同様に、やはりこのスタンレイの葉が気になって、クロロシスであるかどうかを科学的に調べてみたそうなのです。そして、その結果は、陰性と出たそうです。つまり、クロロシス症状にも似たこのスタンレイの葉は、鉄やマンガンが少ないために起こるクロロシスではなく、葉の特徴そのものだということがわかったというのです。

 さらに横田氏は、改良品種の育成にあたって、研究者が外形的にマイナスの形質を持った品種をわざわざ親品種として交配するとは、考えにくいとも付け加えたのでした。陰性と出た葉の検査結果も含めて考えると、確かに極めて説得力のある内容なのです。

 私は、別の意味でこれと全く同じような疑問を持っていたのです。ビッグセブンのみならず、スタンレイが、直接あるいは間接的に関わった品種に、この葉の特徴を持つ品種は皆無なのです。そして、それは外側にたわむという形状においても全く同様なのでした。

 私は、ブルーベリーの専門家でも研究者でもないのですが、果実品質、耐病性、樹勢などはともかく、極めて単純な外形的特徴は非常に引き継がれやすいと考えています。これは、人間の外形的遺伝と全く同じなのではないでしょうか。バークレイを親品種とするブルージェイやブルーヘブン、ノースランドには、丸い果実をつけるという特徴が確実に引き継がれています。これを偶然と否定する方もいるかもしれませんが、私はそれを確信しています。その確信の根拠とは、ブルーベリーに興味関心を抱いて詳細に観察してきた結果、過去の解説書のどこにも記述のないような共通性を自ら感じ取ったからにほかならないのです。私は、ブルーベリーに興味を持ち始めた当初に、ブルージェイやブルーヘブンは果実が丸いという特徴に気が付いたのですが、その後、双方の品種とも交配親の一方がバークレイであったことを知り、当時、新鮮な驚きを覚えたのでした。また、ローブッシュが交配された品種は、そのほとんどは葉が鋸歯になるのも、単純な外形的遺伝の例であると考えています。今のところ、半樹高ハイブッシュ系品種では、唯一ノースブルーにのみ、その傾向が見られないだけなのです。

 さらに、ラビットアイ系品種では、ブルームが多く葉が細長いエセルから派生した系統には確実にその傾向が見られます。逆にブルームが少なく葉が幅広なマイヤーズから派生した系統にも同様にその傾向が見られるのも紛れもない事実なのです。これらは、すべて私が観察から感じ取り確信した全くオリジナルな発見(遺伝による特徴的な事実)なのです。

 以上のような短いながらも確実な経験値に裏打ちされた正しいはずの私の直感では、この極めて個性的な葉を持ったスタンレイという品種が、北部ハイブッシュ系品種を代表する品種の多くの交配親であるとするならば、そのうちの1品種くらいには、その傾向があらわれてもよさそうなものなのです。これだけ多くの優良品種を生み出したはずの親品種スタンレイの葉に、その子孫は、どれも全く似た品種が存在しないのです。

 科学的根拠など全くないのですが、人間が対象物対して特別な感情をもって感じ得たこのような「勘」というものこそが、過去の人間の叡智の一端を司ってきたものと私は確信しています。だから、本物のスタンレイには、必ずや「魅力的な何か」が感じられるはずなのです。