ブルーベリー「接ぎ木」の真実

 都会に暮らし広大な土地を持たない私のような者にとっては、自ら検証のしようがないのですが、接ぎ木苗のブルーベリーは、その差が微妙かどうかは別としてオリジナルとの間に味の差が出るのは事実であり当然のことなのです。私がそれを実際に体感したのは、栃木県大田原市の那須ブルーベリーガーデン(増村農園)でのことです。ここを経営する増村博之氏は、大田原市でいち早くブルーベリー栽培に取り組み、接ぎ木栽培をはじめとし研究に対する姿勢も極めて意欲的な方です。増村氏のような方が多く輩出されれば、ブルーベリー栽培の進展も望めるかもしれません。

 その時実際に食したのは、リヴェイルのオリジナルとその接ぎ木苗の果実でした。その違いは、おそらく同時に食べ比べることでしか認識できないレベルのものでしょうが、明らかに接ぎ木苗の方が水分量が多い(水っぽい)のです。考えてみれば当然のことで、全く同じ条件であれば、根が太く強健なラビットアイ系品種に接ぎ木したサザンハイブッシュの方が幹や枝そして葉や果実に供給される水分量が多いのは当然のことです。また、それにより成長も早くなるのです。

種苗カタログ

 本来、日本の果樹栽培において、接ぎ木は古典的かつ当然ともいえる手法であるのですが、ブルーベリーの世界では認知されていないのではないかと思われるほど、誰もがこの問題に無頓着です。営利農業を前提とした信頼おける種苗業者が販売する苗は、リンゴ、ブドウ、ナシ、桃、梅、柿、栗、そしてクルミやカリンに至るまで、そのほとんどが接ぎ木が前提になっています。したがって、株自体の脆弱性が指摘されるハイブッシュ系品種において、強健なラビットアイ系品種を台木にして栽培するのは、栽培環境によっては最善の策といえるでしょう。実際、私のような都会の真ん中で、さらに照り返しの強い屋上でのポット栽培では、接ぎ木なしでのハイブッシュ系品種の健全な生育は不可能に近いと思われます。

 しかし、問題はブルーベリーの世界では、その台木自体の品種や相性などが全くといっていいほど検証されていないことです。それ以前の問題として、先に指摘したように全くといっていいほど無頓着でもあることです。先に列挙した数々の果樹苗は、信頼のおける種苗業者では、その台木の品種までもが明確にされた上で販売されるのが当然のことなのです。例えば、リンゴを例にとると、「丸葉」「JM5」「M9ナガノ」など台木品種には幾つもの種類があり、当然特性も異なるとともに、苗木自体の価格も異なってくるのです。また、桃に関してはその研究がさらに進んでおり「ニワウメ」を台木にすることにより、大玉品種を前提としながらも株自体のわい性化(小型化)が実現されています。

種苗カタログ

 このように日本を代表する多くの果樹は、熱意ある種苗業者と研究機関による努力、そして多くの生産者の試行錯誤を経て接ぎ木に辿り着き、かつその最善のマッチングが解明されてきたのだと考えます。同時にこのような進歩を目の当たりとして、ブルーベリーを再度俯瞰してみると、その栽培技術がいかに遅れたものであり発展途上であるのかがわかる気がします。私が強く感じることは、私のような素人がこのような問題を認識しているにもかかわらず、それを生業とする人たちの意識の低さなのです。また、私は、当然それを検証し進展させる立場にもありません。偶然ともいえるきっかけから、ブルーベリーに興味を持ち、それを題材としてこの世界で培ったノウハウを自らの真のノウハウに昇華させるために、ささやかな問題提起をしているのです。

 したがって、この問題提起に対する回答と果樹としてのブルーベリーの進展は、膨大なサンプル(広大な畑と株)を持つと同時に強いこころざしのある方々に委ねるしかないでしょう。現在のブルーベリー栽培における接ぎ木による栽培の多くは、弱い品種の株を強健にするという一時しのぎに近い手段に終始し、将来を鑑みた大きな目的を見失っている気がしているのです。

 

注)写真は私が訪問した長野県の種苗会社小町園のカタログをイメージとして使用させて頂いています。