ブルーベリー「剪定」の真実

 日本が世界に誇る果樹であるリンゴの剪定技術は、90年もの歳月をかけて理想の樹形が確立されたそうです。かつて、自分の剪定方法こそがリンゴ剪定の最高峰であるというプライドを持つ幾人かが存在し、その彼らが熱く議論を交わし合い、ある時はつかみ合いの喧嘩にまで発展したというエピソードを聞きました。そのような積み重ねがあり、樹高は4m以内、主枝の角度は45度、樹幹の中心に空間をつくり4つの結果群を持つという現在の樹形が完成したといいます。

リンゴの剪定

 今、ブルーベリーの世界では、唯一横田清氏が提唱している方式があるのみです。なお、これは東北地方における北部ハイブッシュ系品種のみを前提としたものなのです。岩手、秋田、宮城などでは、この剪定方式によって大粒で良質の収穫が可能となっており、実際に成果を上げているといえるでしょう。しかし、さらに寒さの厳しい北海道の生産者からは、この方式に首をかしげる意見が聞かれるのも事実です。だからといって、これを否定した新たな別の剪定方式が提唱されているわけではありません。

 つまり、約90年を経て剪定における一つの理想型が確立されたリンゴと比較するならば、いまだ「我こそが最高峰」同士の対決すら行われていないのが現在のブルーベリー栽培における剪定の実状なのです。リンゴ栽培と比べてブルーベリーの生産者自体が少ないのも事実でしょうが、私のような素人から見れば、いまだこのような状態では各々の生産者の方々自身がブルーベリー先駆者を自認してもいい立場にあると思うのです。もっと、自分自身の着想に自信を持って今後のブルーベリーの世界を切り開いていって欲しいものです。

 これは、私の私感というよりも、私自身の基本的な行動スタンスなのですが、それをブルーベリーの世界に当てはめると、現在定説とされている栽培手法も、歴史のないブルーベリーにおいては真実かどうか怪しいものです。過去の定説を疑うことなく従ってきた従順さが、進歩を妨げているのかもしれません。

ブルーベリーの剪定

 私は、ブルーベリー品種に対する素朴な疑問とそれを解決したいという行動力からブルーベリー大図鑑を制作しました。しかし、それ以後のある意味あきらめに満ちたような現実から、より刺激的な目標を見いだし、もはやブルーベリーの世界では過去の人を自認しています。そして、農地すら持っていないブルーベリーのアウトサイダーでもある私が、1冊の本を書いただけで、今でも地方に行くと先生と呼ばれたりします。私は、その都度それを否定します。

 なぜなら、私とは比較にならないような広大な農地を持ち、日々農作業に明け暮れている人の方がブルーベリーに携わる時間も長いし、経験値もあるはずだと思っているからです。同時に、私には到底及ばない努力と忍耐に敬意を払っているからです。私は推察による仮説は立てられますが、狭い都会の屋上という栽培環境では限界があり検証はできないのです。だから、自らの興味と関心と好奇心に誘われて各地の生産農家を訪ね、現状を見て推測し仮説を立て、真実に近いと確信した時に問題提起をしているのです。

 私は、広告マーケティング企画といういわば農業とは真逆の世界にいたがゆえに、偶然ともいえるきっかけでたまたまブルーベリーに興味を持ったひとりでしかありません。もしかすると、真逆なポジションであるがゆえに見えすぎてしまうこの現状に対し、問題提起ができるのかもしれません。また、時としてブルーベリーに対する情熱の再燃を促してもらえるような問い合わせも、多忙であるがゆえに刺激的なのかもしれません。しかし、いまだに私のようなアウトサイダーが必要とされるブルーベリーの世界は、まだまだ発展途上だといえるのでしょう。