「ジャム」と「コンフィチュール」の違い

 「本当に美味しいブルーベリー」に興味を持った私は、「本当に美味しいブルーベリージャム」にも興味があったため、これに関しても独自の研究や評価、そして様々な実験や情報収集をしていました。

 そんな中で、ここ数年、フランス語の「コンフィチュール(confiture)」という言葉が注目されはじめ、その専門店などが話題を呼んでいます。この「コンフィチュール(confiture)」と「ジャム(jam)」は、一般には同一のものと解されています。

ジャムとコンフィチュール

 しかし、私の解釈は異なります。双方の言葉の成り立ちが異なっており、これは大変興味深いものなのです。英語圏とフランス語圏での食習慣やライフスタイル、あるいは食の捉え方の違いであるのかもしれません。

 英語の「ジャム(jam)」の語源は、「ぎっしりと押し込む」というところにあります。実際、交通渋滞を「トラフィックジャム(traffic jam)」といい、押し合ったり滞っている状態を示す言葉がまさしく「jam」なのです。また、アメリカ英語では、パンに塗ったり、ヨーグルトにかける「ジャム(jam)」が、「ゼリー(jelly)」と同一視される場合も多いといいます。つまり、ここでいう「ジャム(jam)」とは、英語圏では凝固した形状であることが一つの条件でありイメージなのです。

 一方、フランス語の「コンフィチュール(confiture)」とは、砂糖や酢あるいは油などに漬けたという意味の「=コンフィット(confit))」に関連した言葉です。こちらは、食材を保存するための「生活の知恵」が前提となっています。つまり、「コンフィチュール(confiture)」とは、状態や形状ではなく保存目的から生まれた言葉だといえるのです。

 したがって、言葉の成り立ちだけから見るならば、凝固したものを「ジャム(jam)」とし、保存を目的としたものを「コンフィチュール(confiture)」とする区分が、的を射ていることになります。

 実際、パンに塗るには凝固した「ジャム」がいいし、ヨーグルトにかけるには「コンフィチュール」がいいということになります。すぐに凝固する傾向のあるジャージーなどの品種は当然「ジャム」ですが、保存という目的で作ったのであれば「コンフィチュール」を冠してもいいわけです。しかし、保存の意志に関わらず加熱することによって保存可能となるわけですから、「コンフィチュール」という概念の方が広く、その中に凝固という状態や形状を前提とした「ジャム」が含まれるという解釈が論理的には正しいということになるのでしょう。そうすると、スパルタンなどペクチン含有量が少ない品種は、「ジャム」になりにくいことになります。また、糖分が多いほど長期保存が可能になるのですが、「コンフィチュール」の定義に関して期間の制約までは受けないでしょう。

 実際の味覚の点からは、ジャムは凝固していなくても美味しいでしょうし、コンフィチュールとして調理した後、すぐに食べるのも新鮮な加工品としての美味しさを感じることでしょう。

 以上、概念的にはほとんど同一である「ジャム(jam)」と「コンフィチュール(confiture)」を、英語圏とフランス語圏双方の言葉の成り立ちから厳密に考察し、私はこのような解釈や定義をしているのです。

 さて、商品名としてどちらを冠するかの最終判断は、結局のところマーケティングや販売戦略上の問題になるのでしょう。「ブルーベリージャム」と「ブルーベリーコンフィチュール」。もはや手垢のついた「ジャム」よりも、「コンフィチュール」におしゃれなイメージや目新しさがあるのは、当然のことでしょう。だから、この言葉が注目されているだけなのです。この本質とはかけ離れた問題によって「本当に美味しいブルーベリージャム(コンフィチュール)」へアプローチは、また一歩遅れることになるでしょう。