究極のブルーベリージャム~ひとつの結論(1)

 2015年9月19日、休日に仕事をしていた私のもとに一包みのゆうパックが届きました。それは、2009年7月の訪問以来、6年以上もの間ずっとご無沙汰し、お互いに連絡することもなかった秋田県仙北市のエコニコ農園からの突然の贈り物でした。中身は、すでに製品化された2つと、いまだラベルも完成していない3つ、計5つのブルーベリージャムでした。

 一通の手紙が同封されており、試行錯誤を繰り返した結果の自信作だということが記されていました。かつての私との出会い、そして本サイトの「本当に美味しいブルーベリージャム」「究極のブルーベリージャム」での言及に啓発され、さらには私をブルーベリーの世界に引き込んだきっかけでもある「ウェイマウス(現在では多くの地区でリプレイス対象となっている品種)」が、ある意味ジャムに適しているのではないかというひとつの結論に達したという内容でした。

 私は、このうち製品化されてラベルが完成しているブルークロップとペンバートンのジャムを最初に試食してみました。ブルークロップは、大粒で粒状感もしっかりしており、一般にありがちな出荷からはねたものを使ったというイメージは微塵も感じられませんでした。また、凝固感が比較的強くブルークロップは単独でもかなりのペクチン含有量であることがよくわかります。ただし、このあたりは製法にも依存すると考えられるので、この凝固感は作り手の個性の象徴といった方がいいのかも知れません。

 「ブルーベリージャムについての考察」でも記したとおり、私は今まで試験的に素材(品種)を重視して製法を単純化したジャムを多く食してきました。したがって、それとの相対比較では凝固感の強さが若干気になりましたが、製品化にあたってはこのくらいの方が一般に認識されているジャムとしてのイメージに近く受け入れられやすいのだろうと再認識しました。このブルークロップ単品種ジャムの私の総合的な印象としては、「甘みをしっかりと感じる粒状感豊かなブルーベリージャム」というものでした。

 一方、ペンバートン単品種ジャムの印象はというと、ブルークロップの凝固感をさらに超えた仕上がりに驚きを禁じ得ませんでした。その印象は、ジャムでありながらも、以前に私が高く評価した帝国ホテルのブルーベリーパイを彷彿とさせるほどの凝縮感だったのです。スプーンに取るというよりは、スプーンでほじる、はがすというイメージなのです。英語の「ジャム(jam)」の語源とは、「ぎっしりと押し込む」というところにあるらしいので、このペンバートン単品種ジャムこそが、まさにそれにあたる製品だといえるのかも知れません。そんな印象を受けるほど、この製品は個性的なジャムだったのです。

 また、このペンバートン単品種ジャムには、もう一つの大きな特徴がありました。それは、強い酸味が極めて印象的なことでした。加工後にこれほどの酸味を感じる品種は、数多くあるブルーベリー品種の中でも珍しい存在だといえるでしょう。エコニコ農園が、単品種での製品化に踏み切った2タイプのジャムは、品種間異差の微妙なブルーベリーにおいて、一般消費者にさえも、その違いをしっかりと認識させるものとして、ひとつの完成形に仕上がっていると私は評価しました。

 私宛の手紙にはその糖度が明記されていましたが、これは企業秘密かも知れないので、ここではその数値を伏せておきますが、ブルークロップとペンバートンの加糖による糖度は全く同じだったのです。にもかかわらず、その印象は正反対ともいえるポジションにありました。「甘みをしっかりと感じる粒状感豊かなブルーベリージャム」がブルークロップであるならば、ペンバートンは「酸味を特徴とした凝固感の強い野性味あふれるブルーベリージャム」といえるでしょう。このように明確な品種の違いを感じさせる2タイプのジャムは、エコニコ農園のジャムづくりの妙と自信とを象徴する存在に仕上がっていました。