もう、あれから10年。

 2012年夏、久しぶりにかなりの量の情報をこのサイトに追加してみました。ブルーベリー大図鑑の完成以来、私にとってはブルーベリーを超える関心事が幾つも現れ、むしろ興味の中心はそちらの方に移っていったのでした。

 その大きな理由は、遅々として進展しない極めて少量の「本当に美味しいブルーベリー」と極めて大量に存在する「美味しくないブルーベリー」の比率、さらにはいつまで経っても50年前の品種を超えられない新品種ラッシュなど、あきらめに満ちたブルーベリーの現実でした。しかし、やはりブルーベリー大図鑑の存在やその公開の意味があってか、いまだに頼りにしてくださる方々からの依頼や問い合わせもあり、独自にブルーベリーの研究を続けていたのも事実でした。

 そして、なによりも毎年6月頃からは、少量ではあるものの自らが育てた「本当に美味しいブルーベリー」を享受していたのでした。しかし、ここ数年はニュースでも報道されるほど全国各地でミツバチが激減し、もちろん東京のど真ん中も例外ではありませんでした。ブルーベリーを始めた当初は、ほんの少しの緑があり、それらが咲かせる花があるだけで、これほどまでの種類のハチが飛んでくるものなのかと驚いたものでした。ところが、ミツバチの激減と同時に、すべての昆虫の活動が鈍ったようにすら感じられ、東京の自然はもはや本当に終わりなのかと思ってしま紆余うなじ気が何年か続きました。ところが、2012年の春、その激減していたハチたちが久しぶりに復活し、私の屋上に戻ってきたのでした。

ブルーベリーの花とクマバチ

 4月頃からのブルーベリーの花の季節、まさに何年かぶりに、ミツバチ、クマバチ、ニホンヒゲナガハナバチ、コシブトハナバチ等が多数やって来ました。一度にクマバチを複数匹確認できたのは、ほんとうに懐かしい限りでした。そして、それらの訪花昆虫は、ブルーベリーを人工受粉させる苦労もなく久しぶりに大収穫をもたらしてくれました。

ブルーベリーの収穫2012

 思えば、ここ数年間というもの、ミツバチをはじめとした訪花昆虫をほとんど見かけることがなかったのです。しかし、それが復活したことによって、つくづく昆虫とは強いものだと感心しました。人間なんて一度ダメになると、大抵は復活などしてこないものです。特に都会で暮らす私のまわりでは、特にそんな傾向が強い気がします。このハチたちのしぶとさは、精神的にも肉体的にも脆弱になった現代社会で生きる人間が見習うべき強さであるような気がしました。

 そんなことを考えながら過去を振り返ってみると、2001年にはじめてブルーベリーの美味しさに感動を覚えてから、ちょうど10年が経過していました。そして、都会の風景も大きな変貌を見せていました。東京ミッドタウンが誕生し、あらたなブルーベリーの背景ができたかと思うと、すぐに大きな高層マンションが建ちました。また、三分の一は見えていたはずの東京タワーの手前にもいくつかのビルが建ち、見えるのは四分の一くらいになってしまったでしょうか。さらに、泉ガーデンの左側に見えていた旧日本IBM本社ビルは、この2012年に取り壊されることとなり、外壁はフェンスで覆われクレーンでの解体が進んでいます。バブルの時代を象徴する旧六本木プリンスホテルも、何年も前に売却されて同じくこの年に取り壊されます。

ブルーベリー環境の変化

 私のミレニアムは、ブルーベリーとともに始まったようなものでした。それから10年以上が経過して、今後ブルーベリーとどのように付き合っていくのかはまだわかりません。このままでは、本当に心が離れてしまうかもしれません。しかし、ブルーベリーがそれ自体を越えて、様々なきっかけや題材を私に与えてくれたことも事実です。そのおかげで、モノを見る目が養えたのだと思っています。私にとっては、ブルーベリー以外に様々な関心事が増えたこと自体が最大の進歩だった気がしています。そこから再びブルーベリーを見つめた時、さらにこの世界がよく見えるような気がしています。

 いまだ、スーパーや百貨店の店頭に品種名が明記された大粒のブルーベリーが並んでいることなどありません。そして、都会のど真ん中の鉢植えという環境であっても、自分が育てたブルーベリーの方が、スーパーや百貨店で買ってきたブルーベリーよりも、はるかに美味しいというのが相も変わらない現実なのです(2012年夏)。