伊藤ブルーベリー農園(長野県信濃町)

 野尻湖のある信濃町は、広大な面積を持つ長野県のほぼ最北端に位置します。この信濃町には、1971年(昭和46年)からブルーベリーを栽培している伊藤ブルーベリー農園があります。ここ伊藤ブルーベリー農園は、北部ハイブッシュ系のブルーベリー園としては日本初の存在であるとともに、ブルーベリー専業農家なのです。

伊藤ブルーベリー農園

 長野県信濃町は北部ハイブッシュ系ブルーベリーの適地であり、20〜30cmの樹皮マルチを行うだけで、夏場も全く灌水を必要としないといいます。問題は、冬期の2mを超える積雪であり、これに対しては、ブルーベリーの枝が折れないように1株ごとに雪囲いをする必要あり、縛るも解くも相当な作業量となります。他の地域では必要のないこの重労働を毎年繰り返すことを考えると、まさに頭が下がる思いですが、私はこの風景こそが寒冷地固有の「ブルーベリー風物詩」だと思っています。

伊藤ブルーベリー農園

 伊藤ブルーベリー農園で栽培されている品種は、ウェイマウス、コリンズ、スパルタン、バークレイ、ブルークロップ、ブルーレイ、ランコーカス、ジャージー、ハーバート、デキシー、ノースランド、パトリオット、ジューンなどであり、その後の新品種にあまり頼ってはいません。

伊藤ブルーベリー農園

 このうちで最も優れた果実品質を誇るのがコリンズです。コリンズは、甘酸のバランスに優れた品種ですが、その栽培の難しさから、これを主力品種にしているブルーベリー園は日本にはあまり存在しません。また、ここでは最も土壌適応性に問題があるとされるスパルタンも、すべて自根で順調な生育を見せています。つまり、冬場には積雪が2mを超えるような環境が、日本では北部ハイブッシュ系品種の適地ということになるのでしょう。

伊藤ブルーベリー農園

 さらに、一般の生産農家では評価が低いウェイマウスも、いまだ経営には欠かせない重要な品種であり、ブルーベリーの母国アメリカではすでにリプレイスされているランコーカスやジャージーも、ここでは現役品種として十分に通用するのです。また、小~中粒のノースランドも、こちらでは相当な収穫量になります。

伊藤ブルーベリー農園

 ブルーベリーの母国アメリカをはじめとする品種改良の努力によって、新しい品種が多数誕生しているにもかかわらず、ここ長野県の最北端には、ビッグセブン以前の古い品種でありながらも、確実に美味しいと感じさせる多くの品種が栽培されているのです。

伊藤ブルーベリー農園

 この事実は、パテントという大きな足かせを持つ新品種に目を向けてばかりいることの愚かさを教授している気がします。この長野県信濃町の、そして伊藤ブルーベリー農園の事例には、ブルーベリーに関わる多くの関係者が見失いかけている「本質」があると私は考えています。