小町園(上伊那郡中川村)

 小町園のある長野県上伊那郡中川村は、南アルプスと中央アルプス駒ヶ岳を望む美しい風景が拡がるものの、主要な観光地でもないために都会とは隔絶したのどかさを感じることができます。長野県は、古くから果樹栽培に極めて積極的に取り組んでいる県であり、ブルーベリーもその例外ではありません。そして、この小町園という種苗会社こそが、ブルーベリーの日本導入にあたっては先駆的な存在であり、1951〜1952年の最も初期の段階から北海道と東北に並んで、その試作に着手していたのです。

長野県小町園

 小町園は、創業以来「品種正確な優良苗木」を主題とした落葉果樹苗木生産販売専業会社です。ブルーベリーについては昭和40年代前半に、全国でまだ品種が異種同名であった時代に、大学や試験場の協力を得ながら、いち早く信頼性の高い苗木として供給したのが始まりで、その後も純正度を高める努力を他に先駆けて実行している数少ない老舗なのです。 また、日本で民間初の「ブルーベリー栽培解説書」を独自制作したのも、この小町園の松澤孝氏の熱意と努力によるところです。

長野県小町園

 常に真摯な姿勢で苗木生産に関わってきた小町園にとっては、品種同定とは至極当然のことであったといえるでしょう。しかし、 品種間異差が微妙なブルーベリーは、その母国アメリカにおいても、その品種の混乱は初期の時点から発生していたと考えらます。そして、現在においても、必ずしも正確な品種が輸入されて来るとも限らないのです。そのような環境下にあって、ブルーベリーの品種同定を正確に行う努力とは、業として販売するブルーベリー苗木のまったくの裏方の作業になります。にもかかわらず、1950年代のブルーベリーの黎明期から、この正確な品種同定を第一義とし、常に継続してきた小町園という会社を私は高く評価したいと思います。

長野県小町園

 私は、ブルーベリー大図鑑の制作にあたり、幾度となくこの小町園の松澤氏のもとを訪れ、数々の啓発を受けたことでしょうか。ある時、この地で大粒に実った北部ハイブッシュ系品種のトロを食した時、ブルーベリーとは思えないその果実の歯ごたえ(堅さ)とその美味しさに驚愕したものでした。そして、その果実品質は、私の暮らす東京の気候では、どんなに努力をしたところでけっして実現できないと思い知ったのも、いまだ記憶に新鮮です。また、果実のシーズンのみならず、紅葉の季節や冬の季節にも出向いて、その観察や特性把握をさせて頂いたことを今でも懐かしく思い出すことができます。

長野県小町園

  なお、こちら小町園は、極めて多忙な生産農家のみを対象とする種苗会社であり、一般の趣味栽培向けの小売りは基本的に行っていません。したがって、大量購入あるいは農家以外の方が、ブルーベリー苗についての気軽な質問や確認、あるいは観光のついでにお寄りするという会社ではありませんので、お気遣いをよろしくお願いいたします。