KAWASUNブルーベリー園(長野県信濃町)

 長野県信濃町には、北部ハイブッシュ系のブルーベリー園としては日本初の存在である伊藤ブルーベリー農園があります。そして、今ではこの伊藤ブルーベリー農園からノウハウを伝授されたいくつものブルーベリー農家が点在しています。その中でも、園主である川原田孝一氏の努力によって、私の評価としては全国でもトップクラスのひとつともいえるブルーベリー園が、このKAWASUNブルーベリー園なのです。訪れるたびに園は拡大し、研究やチャレンジにも余念のない川原田氏によって、常に進化しているように感じます。

 フレッシュブルーベリー(生果)においては、消費者の手に届くまで劣化しない品種を厳選し、加工品においてもオリジナルのブルーベリージャムには、自信を持っているということです。確かに、KAWASUNブルーベリー園のジャムは、低糖で加工品でありながらもフレッシュさを失わず粒状感溢れる私好みの仕上がりです。ジャムが仕上がる季節には、ほぼ毎年のようにまとめ買いをして、社のスタッフに配布したり贈答用に使っています。

 私は、2009年のNTTコミュニケーションズのブルーベリープロジェクトで品種ごとの生果を大量に調達して頂いたことをきっかけに、このKAWASUNブルーベリー園の川原田氏とは特に懇意となりました。その後は、発送を前提としたフレッシュブルーベリー(生果)の品種選抜にあたって互いに協力し経験値を積み重ねてきました。

 川原田氏は、毎年最高の出来のブルーベリーを品種ごとに私のもとに送ってきます。私は、到着したありのままの状態をすべて写真におさめ、品種ごとのつぶれ比率などの状態を詳細なレポートにして返します。私は、自らの興味に任せたブルーベリーの真実を知ることができ、川原田氏にとっては、将来に向けたビジネス上の生データでありノウハウの蓄積となるわけです。

 この発送を前提としたフレッシュブルーベリー(生果)の品種選抜実験は、すでに5年以上に及びますが、いまだ毎年のように新たな発見があったりするものです。当初は、川原田氏は冷蔵(クール便)での発送がいいと考えており、私はたとえ気温が35度を超えていたとしても絶対に常温だと主張したものでした。

 東京では最も暑い時期が収穫のほぼ最盛期にあたるため、発送側の現地としては単に最高のものを最高の状態で発送したので、それでいいという問題ではないのです。宅配業者の手順や配送方法の実態までを勘案し、実際に消費者(この実験においては私になります)の手元に届いた時点で、いったいどうなっているかということで評価する必要があるのです。また、最も果実の傷みを回避する輸送には、どんなケースがいいのか、さらにどんな梱包の仕方や梱包材などが適しているかに関しても幾度か試行してみたものでした。

 この長年にわたる実験の結果とノウハウの蓄積は、KAWASUNブルーベリー園川原田氏のビジネス上の固有資産でもあるため、ここでは詳細な記述は避けます。しかし、現時点では配送に適した品種はほぼ確定され、絶対に混ぜてはいけない品種、さらには、同じ品種でも収穫時の天候等の状態によっても、発送から到着までの期間に問題が生じてくる品種もあることがわかり、その対策とノウハウなどもある程度押さえられたといえるでしょう。

 花柄痕が小さく一般に輸送に適していると思われていた品種が意外にもそうでなかたり、ブルーベリーにはまだまだ未知の部分がたくさんあるということです。そして、そのノウハウは、このような地道な努力や試行錯誤の積み重ねによってのみ蓄積されるものなのです。いくつかの同じ品種を毎年のようにチェックすることもあるわけですが、前述したように、それでもその時々の状態や環境の違いによって、いまだに新たな発見があることがそれを物語っている気がします。

 以上のことから、KAWASUNブルーベリー園は、極めてクオリティの高い北部ハイブッシュ系のブルーベリーを生産する日本屈指の農家であるだけでなく、現時点においては配送によるフレッシュブルーベリー(生果)をベストな状態に最も近づける経験値とノウハウを持った数少ないブルーベリー農家だといえるでしょう。

 そして、ここKAWASUNブルーベリー園には、もうひとつ興味深いことがあります。それは、早生のコリンズ(ブルーベリー「挿し木」の真実で言及)があることです。川原田氏から一株だけ早く実をつけるコリンズがあると聞き、その株を確認したところ、外形的特徴はまさにコリンズでした。私は、DNAが同じで性質(熟期)が異なるコリンズだろうと確信しました。これを母樹として増やしていけば、今後、KAWASUNブルーベリー園では、ウェイマウスの熟期に近い早生のコリンズが味わえることになるのでしょう。