市場化の検証(6):加工品(フランス料理のデザート)

フランス料理の前菜とメインに続いて、デザートへのアプローチを実施しました。協力をお願いしたのは、メイン・前菜同様にジビエ料理を得意とする東京六本木の「ラ・シャッス」です。

ラ・シャッス店内

■デザート(コンポート)

デザートの定番ともいえる数種のフルーツを使ったコンポート。ブルーベリーとアメリカンチェリー、そしてヨーグルトシャーベットを添えたものです。全体の色鮮やかさのみならず、白の食器を使い透明感を演出するために、赤ワインではなく、あえてロゼワインを使っているところが最大のポイント。アメリカンチェリーはブルーベリーと同系色になるものの、ブルーベリーの濃厚さが際立ち、ヨーグルトシャーベットの白とのコントラストが見事に表現されています。

ブルーベリーデザート

■デザート(シャーベット:TypeA)

上に載っている緑色の果実もブルーベリーなのです。ブルーベリーを皮ごとミキサーで回したシャーベットの上に、凍らせてから皮をむいた大粒のブルーベリーが添えてあります。

ブルーベリーの果皮自体の濃厚さから、多くのブルーベリーデザートはヨーグルトやシャーベットなどとあわせない限り単体では色鮮やかさに欠けると思われますが、皮をむいたブルーベリーとは、まさに思いつくことのなかった逆転の発想だといえるでしょう。これは、新たな驚きであるとともに斬新でもあります。

このブルーベリーシャーベットは、すべてがブルーベリーでありながらも、そこからは想像し得ない緑色(グリーン)を最大のポイントとしています。手間はかかるものの、意外性としての「彩り」が見事に表現されたものといえるでしょう。

ブルーベリーデザート

■デザート(シャーベット:TypeB)

こちらも「シャーベットType A」と同様に、ブルーベリーを皮ごとミキサーで回したシャーベットの上に、凍らせてから皮をむいたブルーベリーを添えたものです。濃厚なブルーベリーシャーベットに、すっきりと甘いヨーグルトシャーベットとのコンビネーションが絶妙でした。

やはり、皮をむいたブルーベリーのアクセントが素晴らしいといえます。ただ、写真写りとしては、ヨーグルトカラーと皿の色が同系色であったことからヨーグルトシャーベットの存在感が希薄だったかもしれません。こちらには、皮をむかないブルーベリーを載せれば、ブルーベリーの印象をダイレクトに表現できる最高のマッチングになるかもしれません。

ブルーベリーデザート

■総括(前菜、メイン、デザートに対するシェフからの意見)

ブルーベリーという素材に対する依田シェフの第一印象は、「とにかくペクチンが多い」ということ。つまり、これほどまでにソースが凝固するとは思わなかったようです。この事実は、相応の経験を積んだシェフ(料理人)にとっても、ブルーベリーとはある意味「未知の素材」だったことを意味します。ここに、さらに品種による特性の違いを付加したならば、ブルーベリーとは、さらなる「未知の素材」ということになります。これは、いまだ「市場化されていない」商品であることの裏付けであるとともに、そのポテンシャルとは、現時点においては予想しがたいレベルだともいえるでしょう。

ただし、ブルーベリーの各品種ごとの非常に短い「旬」を考えれるならば、扱うに難しいことも事実でしょう。品種特性の把握とは、調理を前提としてのノウハウに必要な要素といえそうです。

なお、今回は厳選された生食用の素材であったためなおさらだったのですが、シェフの評価としては、その価格(3000円/1kg)を考えるとソースには使えない原価になってしまうということでした。ソースにはブルーベリー以外の素材や調味料も使うため、下手をするとメインの鹿肉よりもソースの原価が上になってしまう可能性もあるというのです。この事実は、今後さらに高付加価値をつけていく生食用と調理素材用途の棲み分けを考えるのに重要な示唆でもあると考えられるでしょう。